食事療法

糖質を制限すること

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食事療法と一口に言ってもいろいろある中で、私が実践しているのはケトン食。

糖・炭水化物の摂取を極端に減らすことにより、
通常、体内でエネルギー源として使われている糖が枯渇、
代わりに脂肪が分解されてケトン体が生じます。
これをエネルギー源として利用するものです。

がん細胞はグルコース(ブドウ糖)に対する依存度が
正常細胞に比べて何十倍も高いという特性があります。
がんを見つける検査法にPET-CTというものがありますが
これはブドウ糖を含んだ薬剤を体内に点滴で入れて、がん組織に集まる様を画像化するものです。
PETは正常細胞に比べてブドウ糖の取り込みが非常に早いがん細胞の特性を利用した検査方法というわけです。

細胞が、炭水化物、脂肪、タンパク質をエネルギーに変換する経路は
①解糖系②TCA回路③電子伝達系における参加的リン酸化④エネルギー(ATP)産出
ですが、ここについて詳細に記すのはやめておきます。
ああ、これ、大学(農学部)でもやったなぁ、
今ならとても興味深く聞けるなぁというところです。
(炭水化物とは、糖:代謝されてエネルギーになる+食物繊維:消化酵素で
消化されないものの総称です)

人が動くためのエネルギー、その源には
ブドウ糖を燃やしてエネルギーを産出するというプロセスがあります
ブドウ糖は、食事中の糖質が小腸で消化酵素によって分解されてできる
「単糖(糖類の最小単位)」です。

人が食事によってエネルギー源として体内に摂り入れる栄養素は
「糖質、脂質、タンパク質」でこれらを三大栄養素といいます。
(あと、ビタミン、ミネラルを足して五大栄養素)
これらの栄養素は呼吸でとりいれた酸素を使い、ゆっくり燃焼してエネルギーを作り出します。
摂取エネルギーが消費エネルギーより多い時、余ったエネルギーはおもに脂肪となって貯えられます。

からだが消費するエネルギー量や食事に含まれる熱量をあらわす単位としてあるのがカロリー。
人間は何もせずじっとしてしても、
男性で1日約1500Kcal、女性で1200Kcalのエネルギーが消費されています。
これを基礎代謝量といいます。

三大栄養素の1gあたりのカロリーは、炭水化物と蛋白質が1gあたり4Kcal。
脂肪は9Kcalです。

近代栄養学では、全カロリーの60%を炭水化物から摂取することを推奨しています。
肉類、脂肪の取りすぎはよくないという考えからだそうです。
けれども、穀類や芋類を主食にする食事で人類が生活してきたのは、
約700万年におよぶ人類の長い歴史の中のごく短い期間。
狩猟採集社会では、摂取カロリーの半分は狩猟によって得た動物性食品で、
残りは採集した木の実や果物、野菜、豆であったと考えられています。
農耕が始まったとされる15,000年前、
穀物が安定して得られるようになり、炭水化物の摂取量が上がりはじめました。

近年は、消化吸収の効率や味をよくする目的で精製加工したり、
砂糖を多く使った食品が多くなっています。
これにより、肥満、糖尿病、がんのリスクが高まることは明らかになっていますが
糖質の過剰摂取が、高インスリン血症、心臓血管疾患、自律神経失調症、感染症、アトピー、
アルツハイマー、うつ病など、さまざまな疾患発症にも関連していることが指摘されています。
(花粉症も、糖を制限することで軽減することが確認されています)

カロリーを減らさずに糖質を減らすためには、脂肪の摂取量を増やす必要があります。
脂肪酸が分解した時にできる「ケトン体」は、
ブドウ糖が枯渇した時の代替エネルギーとなります。
正常細胞はケトン体をエネルギー源として利用できますが、がん細胞は利用できません。

脂肪を多く摂取しても炭水化物の摂取量が少なく、カロリーがオーバーしない条件であれば
からだの機能を損なうことはありません。
(高脂肪+高糖質では、発がん率は高まります。
高脂肪+低糖質、低糖質+高タンパクではがん増殖抑制の報告あり。)

糖質を極端に減らし、かわりに脂肪を多く摂取してケトン体を増やす食事が
がんを弱らせるための食事療法として提唱され始めています。

糖質を制限することで、血糖値が極端にあがったりさがったりすることもなくなるので
空腹を感じることもほとんどなくなります。
(空腹感は、血糖値が極端に下がることで生じます)
血糖値が高い状態から低くなる時に心理的な揺らぎが生じますが、
その落差が精神的に影響していると考えられます。
実際に血糖値が急激に低下するとイライラが増幅、攻撃的になります。
アドレナリンは血糖値を下げ過ぎないために対抗分泌されていると考えられていますが
そのアドレナリンは興奮作用をもたらし、精神面に影響を与えています。

消化器系に負担がかからないせいもあり、からだも軽くなります。
朝起きて、なんだか重だるいということがなくなりました。
胃腸が快適になるだけで、無意識に感じてきたからだからの不機嫌がなくなります。

極端な糖質制限は、病気治療でない方はする必要もないと思いますが
日常の中でおやつを減らす(減らすというか、やめる。
ごくたまに贅沢なおやつを食べるのみにする)、
寝る前のご飯をやめておかずだけにしてみる、
それだけでもずいぶんと心身ともに負担が減ります。

糖質を制限することでからだ、こころが安定します。
それは体感ずみです。

次回は、私が実践しているケトン食についてもう少し詳しく書いてみます。

参考書籍
ブドウ糖を絶てばがん細胞は死滅する!/福田一典/彩図社
糖質制限の教科書/江部康二/洋泉社
「糖質制限+中鎖脂肪酸」で確実にやせる! 驚異のMCTオイルダイエット /畠山昌樹/幻冬舎

糖質制限食にがん治療効果はあるか?
https://mainichi.jp/premier/health/articles/20160128/med/00m/010/011000c