抗がん剤治療は、化学療法とも言ったりする。
化学療法は、他の治療法(外科手術、放射線療法)と対比する場合に使われる。
前も書いたけれど、抗がん剤治療は、
さかんに増殖活動をしている細胞に影響を及ぼす。
がん細胞だけでなく、皮膚や腸管、骨髄、毛根の細胞など。
がん細胞だけに効いて欲しいけれど、正常な細胞までダメージを喰らう。
薬剤師さんは「毒ですよ」と言ったけれど、
確かに一服盛られたかのごとき苦しさだった。
完全に死なないまでも、これ死ぬかもぐらいは思った。
(でも、人はそう簡単には死なない。)
抗がん剤治療に抵抗を示す人は多いようで、
ネットの中でも否定的な意見をよく見かける。
私もあまりがんについてよく知らない頃は、
抗がん剤治療に対するイメージは悪いものでしかなかったが
今回、がんだということがわかっても、
抵抗なく抗がん剤治療を受けることを決めた。
一度は受けてみようと気持ちが揺れずにすんだのは、
ちょうど前年に通っていた上智大学グリーフケア人材養成講座で
「先端医療・緩和医療」という授業を受講できたことが大きい。
この授業は、J大病院の先生方が各分野について講義してくださるという
とてもとても贅沢なものだった。
どの先生も素晴らしい熱意にあふれていて、仕事で忙しいはずなのに
嬉々としてスライドを作って話をしてくださった。
それまで病院との縁がほとんどなかった私は、
医師がどういう人たちなのかあまり知らずにきたけれど
こういう先生方になら身を預けてもいいなぁと思えるほど、
先生方の想いが伝わる授業だった。
この頃、わたしはこんなことをツイートしている。
癌になったならば、私の肉体、精神、金銭あらゆる面に置いていちばん負担のない治療方向がきちんと見極められる先生に出会えることがなにより。それも含めて私のいのちだなぁと思う。
ネットの中では、医療を否定する人たちの声もよく見かけるが、
そんなひどい人ばかりでもないだろうと思う。
利権だのなんだのと医療不信をあらわにして騒いでも、
基本的には西洋医学によって人が死ななくなった事実がある。
もちろん、西洋医学だけですべてはまかなえない。
自分のからだ一斉を医療に預けて、「さぁ治してよ」では、
治るものも治らないだろうとも思う。
ひとまずは標準治療を受ける。
そこでたりないものを補う方法はいろいろある。
まさか本当に、その後に自分が抗がん剤治療を受けることになるとは
思ってもみなかったが、私はこの授業を受けていたおかげで
がん治療に対するある程度の知識を得ることができていたし
がんだとわかった後も、
ひとまずは病院と先生方を信じて治療に臨もうと思えたのだった。
実際、このところ医師という職につく人たちに出会うが、
出会う人みんな患者のことを常に考える人たちで
その熱によって私も生かされているのだなあということを感じる。
先生との出会いも、わたしのいのちだと思う。
誰と出会わせてもらえるのかも、命運。
その采配は誰がしているのだろう。
そういうことは、自分のちからでどうなるものでもない。
引き寄せなんかではない。
渡りに船で、私はいい。
多分、この世に生まれてきたこと自体も
渡りに船だったんじゃないかと思う。