ことば

治療を選ぶということ 3

Pocket
このエントリーを Google ブックマーク に追加

私がまよったわけは、おそらくもうひとつある。

相方の知り合いで、子宮頸がんだった方が先日亡くなられた。
私は、その方のことをしらなかったが
FBに容体が記されているのをのぞきみていた。

過去の記事を拝見すると、標準治療ではなく
代替療法を受けていたようだ。

がんだとわかった頃、ステージとしては初期のものだったようだが
3年半を経て、亡くなられた。
「ああしていれば、こうしていればと思って苦しい」という、
彼女亡き後のご主人の言葉に胸がつまる。

 

 

がんになる前から、耳にしていたのは
抗がん剤の副作用とそのつらさや
抗がん剤は効かないという話。
がんで死ぬのではなく、抗がん剤で死ぬんだという話。

私も、昔、がんを患った人から
「抗がん剤が効いて」という言葉を聞いて
そんなこともあるんだな、珍しいことだと思ったことを覚えている。
抗がん剤は効かないものだと思っていたということだ。
全く無知だった。

がんだとわかる半年前、グリーフケア講座で「先端医療」という授業があり
その認識がただしいものではないということがわかった。

抗がん剤によって救われている人はたくさんいるのだ。
実際、私も治療の効果を目の当たりにしている。

 

がんとひとくちに言っても、
できる部位、臓器、ステージによって様相はまるで異なる。
さらにがんにも種類がある。
私の場合、子宮体癌のなかでも粘液性線癌といって、
子宮体癌としてはめずらしいタイプのがんだ。
一般的には、類内膜腺癌が多い。

 

がんの顔つきが悪いという言い方があるが、
あれは未分化、低分化の細胞のことを指す。

元の正常な細胞に似ているほど分化度が高く、
かけ離れていればいるほど分化度は低く
なる。

高分化がんは正常な情報を多く残したまま細胞分裂しているため、
増殖のスピードは比較的ゆっくりで悪性度は低く
「顔つきがおとなしい」と言われる。

 

一方、中分化、低分化になるほど細胞分裂のスピードが速くなり、
それだけ浸潤・転移しやすくなる。

特に未分化がんは、どの細胞から発生したかどうかすら
確認できないほど情報に乏しいがん細胞。
増殖が速く、悪性度はもっとも高くなる。

 

このように、がんといえども細分していくと、
おそらく人の数だけ異なる病となる。
そして、抗がん剤もそのがんの状態に合わせて処方されるもので
効果の出る人もあれば、効果がなかなかあらわれない人もいる。

おなじような婦人科系統といえど、子宮と卵巣でも使う抗がん剤はまるで異なり、
私の場合も原発がどちらか特定するのにはじめは苦心されたようだ。
がん研での初診の際、「どっちでも変わらないんじゃ…」という私の発言に
「全然違います」と先生は言った。

 

 

 

多くの人が「抗がん剤はおそろしい毒だ」と思っているようだ。
まぁ、私も実際、肉体的にはかなりきついと感じている。
でも、人によっては全然平気だったという人もいる。
使う抗がん剤によっても違うようだ。

抗がん剤を拒絶して代替療法を選び、後悔している人の話も聞く。

私が言えるとしたら、はじめから拒絶するのではなく
初発ならばひとまずは標準治療を受けた方がいいということ。

標準治療とは、科学的根拠に基づいた観点で、
現在利用できる最良の治療であることが示され、
ある状態の一般的な患者さんに行われることが推奨される治療をいう。
つまり、日本で受けられる医療の中でいまのところ最高の治療を意味する。

 

日本語で、標準治療と言いますと、“並の治療”“平均的な治療”のように聞こえてしまうかもしれません。標準治療とは、英語の“Standard therapy”を日本語訳したものですが、わかりやすく言うと、“最善・最良の治療”のことです。最善・最良の治療は、どうやって決められるのか? と言いますと、基礎研究、臨床研究の結果、決定されます。

勝俣範之/日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科教授

https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20161212-OYTET50022/

 

標準治療を受けなくても、治癒に至る人は確かにいる。
けれども、それは奇跡ではなく、相当な尽力の賜物だと思うし
治るものと治らないものがある、それだけだと思う。
治癒に至れた人は、治るべくして治ったとも言えるんじゃないかと思う。

治るがんがある。
治らないがんがある。

細胞の増殖がとまらなくて、肉体を奪われてしまうこと。
それはその人の寿命かもしれない。
そこは私にはよくわからない。
でも、この世でまだやりたいことがあるならば
初発の方には、標準治療で今しばしがんばろうとエールを送りたい。

ここに記されていることも、私にとっては腑に落ちるものだ。

逆説的なんだけど、癌になったら病院の標準治療を受け、抗がん剤なり放射線治療などを受けるべきだ。ただし医者の言うことを全てを鵜呑みにせず、放射線や抗がん剤でボロボロになった身体の免疫を高めるよう、一切の体に悪い食事はやめて、癌の餌である砂糖は徹底的に控えて、素人でも可能な体質改善に最低でも5年は全身全霊をかけるべきである。そこは全力でやるべき。

それだけでも十分大変なのに、もし標準治療をせずに体質改善だけで治そうと思うなら、まるで密教の修行僧が如く命懸けの活動が必要だ。怪しいエキスを飲んでゆったりしていたり、精神的にゆったりしてニコニコしてたら癌が治るとかは、今回本気の体質改善で生還した人を見たからこそ、絶対に素人には無理だと断言できる。気をつけたほうが良い。なんとなくの信仰心とか思い込みで標準治療を拒否するのは、かなりの割合で自殺行為である。

 

私も、いろんな人の言葉に迷った。
「抗がん剤なんて」という人もいた。
でも、治療するのは私なのだ。
その人ではなくて。
さまざまに惑わされてつらいこともあるかと思うが、
自分で選んだと意識できることがなによりだ。

がんばりましょう。お互いに。

 

 

 

 

あと書き出したいのは、やはり
意識の持ち方についてだな…