【野崎島】2007年6月

めぐみは2007年2月に、自分で死を選んで
この世を去ってしまった。
自分自身で引き寄せた糸が、ぐちゃぐちゃにこんがらがってしまい
その糸の中で、彼は自らをがんじがらめにしてしまった。
そして、本人もわけがわからないうちに、
肉体を離れることになってしまったようだ。

遺された側にとっては実にいい迷惑なのであるが
どうも、彼は今幸せであるらしい。
遺された側も、結局はすべておさまるべきところにおさまり
案外、これでよかったのかもね、と思う。

それにしても、「死」は遺された側にとって
なかなか乗り越えがたい大きな障壁だ。
はじめから最後までホントめんどくさいヤツだな
と思いながらも、私はすっかり傷心しきっていた。

宇久島の向かいに、野崎島という
いまは無人になった島がある。
野崎島は小値賀島が管理をしていて、
残された古い小学校を利用してキャンプ施設が整っている。
そして、かつて暮らしていた民の想いが寄せられた
古い教会が残っている。

その野崎島の教会で、オカベくんが
ふたたびハープのコンサートをするという。
そこにまた私も同行することにした。

小さな天主堂に響くハープの音。
今までいろんな場所でハープの音を聴かせてもらったけれど
一番、美しい音に聴こえた。
気持ちよさでまぶたが重くなってくる。
3曲目ぐらいからストンと眠りに入ってしまった。
そんなに時間は経っていないけれど、それはそれは深く入り込んでいた。

鳥のさえずりと風
という曲は、私も大好きな曲で
オカベくんにとっても、代表曲といえる曲だそうだけれど
私はこの曲を聴くと、胸がいっぱいになる。

弦の音が何十にも重なって聴こえて
音の粒子の中に境目もなく自分がいたようだった。

夕陽がステンドグラスの色を写しとって堂内を照らす。
何もかもがきらきらとひかって、満たされていた。