わたしを束ねないで

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わたしをたばねないで
あらせいとうの花のように
白い葱のように
束ねないでください わたしは稲穂
秋 大地が胸を焦がす
見渡すかぎりの金色の稲穂

わたしを止めないで
標本箱の昆虫のように
高原からきた絵葉書のように
止めないでください わたしは羽撃き
こやみなく空のひろさをかいさぐっている
目には見えないつばさの音

わたしをがないで
日常性に薄められた牛乳のように
ぬるい酒のように
注がないでください わたしは海
夜 とほうもなく満ちてくる
苦い潮 ふちのない水

わたしを名付けないで
娘という名 妻という名
重々しい母という名でしつらえた座に
坐りきりにさせないでください わたしは風
りんごの木と
泉のありかを知っている風

わたしを区切らないで
, や . いくつかの段落
そしておしまいに「さようなら」があったりする手紙のようには
こまめにけりをつけないでください わたしは終りのない文章
川と同じに
はてしなく流れていく 拡がっていく 一行の詩

—・—・—・—・—・—*:・゜

昨日の、シガアルセイカツでよんだ一詩。
新川和江さんの「わたしをたばねないで」。

22日から滋賀を訪ねた。
琵琶湖のほとりにある松の木につられていたブランコに乗った。

湖にむかって伸ばした足。
揺れる勢いを増すために
強くふりあげる。

こどもの頃に、立った状態で膝をつかって
高く高く漕ぐのが好きだったことを思い出す。
そしてあの爽快感も。

ラベルをつけず
とどめず
自分の勢いを感じ、
ひろがり
ながれて
そのままにいけよ

新川さんからのエールとして受けとった。

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